ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書)
![]() | ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書) 講談社 2009-11-19 by G-Tools |
映画「サロゲート」公開にあわせて刊行された石黒先生の本。
私が初めて石黒先生の研究を目の当たりにしたのはまだRobodexが行われていた頃、それ関係の取材だったと思う。
あれももう6年前か。
自信の分身アンドロイドのジェミノイドに象徴されるマッドな先生のイメージに反した、とても真摯で男気のある研究論。科学者として、言い過ぎないようにとても気を遣っているのが伝わってくる。

ジェミノイド。
アクセスできる人は本書を読んだ後、彼の論文を読むとさらにおもしろい。
熟達した研究者は、ある人の書いた論文を一通り(もしくは代表作を)読むと、その論文の間を読んでどういうふうに興味・問題意識が移り変わって言ってその先に何があるのかを見通せるらしい。
でもひよっこには副読本としてこういうガイドがあるととてもありがたい。
離れたところにある研究所のミーティングに出るのに遠隔操作できるジェミノイドで出る最大の問題が、それだと労務費が支払われないことらしい。
姿形の実態がロボットなだけで問答も動きも遠隔で生身の本人が行っているのに。
私自身がその場にいない、実際に研究所に出勤していない状態では、いくら働いても労務費が払われないのである。テレビ会議で労務費が払われないのと同じ解釈なのだろう。
遠隔にいるのが本人であることが証明されないので発言に効力がない、とかそういう問題が起きそうなのにそうではなくギャラの問題、と言うのもちょっとおもしろい。そして頭脳労働トップにいる先生が自分のギャラのことを「労務費」というきわめてブルーカラーなニュアンスで表現していることも。
そして、テレビ会議だとギャラが払われない事を先生は納得しているのにロボットだと疑問を持っていることがbmにはうまく理解できなかった。それらには一体どのような差があるのだろう。テレビ会議だってギャラが発生して同然だろうに。そのあたりをうまく納得できないあたりに、bmの中のコミュニケーションのイメージ・ロボットに対する考え方が位置づけられているのだろう。
ロボットの姿形が人間として最低限の見かけを持っていれば、そのロボットは夫婦の間にある密な人間関係を媒介できる可能性がある、と私は考えた。夫婦の間には、一緒に過ごしたいという情動が作用しているが、その情動を伝えるロボットを作れる可能性がある。人間の根幹である情動を伝える事の出来るロボットを作れる可能性がある。
メールやblog,Twitterで緩やかな感情を共有するのに対して、物理的な体を持ったロボットが密な感情を媒介するというのはとてもおもしろい発想だと思った。
RAH(robot aided humanity)なんて略語を思いついてなるほど、と思ってみたり。
本書を通して思うのは、やっぱり研究は「自分のため」にやらなくてはいけないということ。
自分が知りたいこと、おもしろいと思うことこそをやらないと意味ないな。
誰に雇われたからとか社会で何が望まれているかとかそんなこと気にしてたら、そんな雑念の処理で使える時間のほとんどが消えてしまうし、おもしろくない。
もちろん、書類には社会的な意味づけとか自分以外の誰がうれしいのかをでっち上げなければならないが、それは何とかやるとして研究の主役は自分であるべき。
今週末のアルスエレクトロニカ受賞作品上映会でジェミノイド、見られるかなぁ。

